青森県小児科医会会長  河内暁一

 今年も気が付くと師走を迎え年末のご挨拶をする時期になりました。皆様お元気でご活躍のことと思います。この挨拶の文章は会員の皆様にのみお送りするので、小児科以外の医者が読むとクレームをつける部分もあるかと思いますが、本音をお伝えしたいと思います。

現在の青森県小児科医会の会員数は80名です。ちなみに日本小児科学会青森地方会の会員数は129名(登録会員数は141名ですが、県外の病院に勤務している者12名)です。

本会に未入会の方は、若い小児科医が多いと思いますが、中には指導的な役割を果たしている中堅の小児科医で、入りそびれている方もおられると思います。実際私が入会の案内をした際、一度も誘われたことがないという方もおりました。日本ではこれからの10年小児科医療の姿は想像以上の変貌を遂げるものと思います。地方の少子化はさらに進みます。小児科医の高齢化が進み、一気に世代交代が始まります。高齢者医療費の高騰のため医療費抑制の嵐が小児医療の世界にも吹き荒れるでしょう。小児科医として開業することは大変困難になるでしょう。医療の最前線でわれわれが担っている小児医療の多くが、総合診療(専門)医によってなされるようになるでしょう。国は小児医療を小児科医が担いきれない地域で総合診療(専門)医がその役割を補ってほしいと考えている。小児科医と総合診療(専門)医が協力をして地域の総合医療を確立してほしいと言う。同じように産科医の少ないところでは産科医にも協力するとのこと。しかし小児科医は急速に減少し、総合診療(専門)医は一気に増えてゆくだろう。小児科医は臓器別専門医が各基幹病院に配置されているだけで、現在の小児地域医療の多くは総合診療(専門)医が担うことになるだろう。小児科は外科などのように技術が目に見える科とは違い、診療レベルの高さは一般の人達にはわかりにくい面があります。それでも小児科医ではない近医を受診し、治らないからと最終的に我々のところに来る乳児なども多く、小児科の実力を実感してもらえる機会はまだあります。しかし治らなくて毎日のように通院していたほうが多くの診療報酬が払われると思うと、割り切れない気持ちになります。小児科医と総合診療(専門)医とでは乳幼児の診察ではかなりの実力差があるはずです。しかしそれを実感として感じてもらうのはそれほど簡単なことではありません。小児科医から見ては、初期診断が不適切で治療に長期間を要したと思われる例でも、同じ患者でもう一度治療をしてみせることはできません。いまでも看板に診療科を沢山挙げてある医者の方が、何でも診ることができるりっぱな医者だと思う人もいるのです。小耳にはさんだ話ですが、総合診療(専門)医は子供からお年寄りまで診られるが、小児科医は子どもしか診られない医者なので、総合診療(専門)医の方が優秀だと発言している者がいるそうです。世の中に対し、間違ったプロパガンダをする、または民意を誘導する目的で意図的に正しくない説明をすることにより、それを信じた若い親は一斉に小児科医離れを起こすかもしれません。現に最近は全国的に、幼児どころか乳児でも風邪をひくと真っ直ぐ耳鼻科に連れてゆくのが当たり前だと考える親が増えていると言われている。さらに心配なのは、赤ちゃんがくしゃみをしたので、アレルギー科に行ったというのもあります。そこで抗ヒスタミン剤を出されて鼻閉の為哺乳ができなくなって小児科に来ることもあります。このような状況下で勤務医であれ、開業医であれ子どもの味方である小児科が力を合わせて正しいことを世の中に発信してゆく必要があります。11月26日開催された役員会で、各会員が一人でもよいので、自分のまわりでまだ医会に入会していない小児科医を勧誘しようと話し合われました。ぜひぜひよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

平成28年を振り返って(こんなことがありました。私のメモから独断と偏見でピックアップしたもので、重要度などは反映されていません)

  • 平成28年4月から学校での健康診断の実施方法が変わった。
  • 平成28年4月の診療報酬改定により「小児かかりつけ診療料」が新設された。対象は3歳未満で患者の電話などの問い合わせに常時対応することが算定条件。また小児科外来診療料を算定していることも条件になっている。全国的に高齢化している小児科医にはハードルが高いのではないかとの意見が多い。
  • 津軽地域小児救急医療二次輪番病院の国保黒石病院が小児科常勤医不在の為、輪番から撤退。二次輪番担当病院は4か所になった。
  • 青森県内の出生数の減少、それに伴う小児人口の減少により、産科医と小児科医のなり手が少ない状態が続いている。小児科医、産科医のいない市立病院など20年前には考えられなかった。
  • 平成28年5月5日子どもの日には14歳以下の子どもの数が35年連続減少し続け、総人口に占める割合は12.6%になった。青森県では15万1千人で人口に占める割合は11.5%と全国で4番目に低い水準になったというニュースが新聞紙上に載った。世界で4000万人以上の人口のある国31国の中では比率は最も低いという。
  • 同じく5月24日には2015年の青森県の出生数が8621人と1950年以来最低であると報告された。生涯未婚の者の比率が増え続けていることが最も大きな原因であろうが、子育ての喜びを感じない若者が多くなっているのは、経済的に厳しいからという理由だけではないであろう。未来に対して希望を持ちにくくなっているからなのではないのか?
  • 青森県医療薬務課のまとめでは2015年度(平成27年度)小児救急電話相談件数は前年度に比べて37%増加し、5369件であったとのこと。
  • 児童虐待も報告件数は増え続けている。児童相談所が平成27年度対応した児童虐待の件数は初めて10万件を超えた。学校でのいじめも問題になり続けている。
  • 日本専門医機構は平成28年7月、来年度から予定していた新専門医制度の実施を1年延期することを決めた。小児科学会認定小児科専門医の資格更新は我々開業医にとって可能なのだろうか?
  • 人工頭脳(AI)が膨大な医学論文を学習した結果、診断の難しかった患者の病気を10分ほどで見抜き、適切な治療を助言し、患者が回復したとの報告が8月の新聞に出ていた。不勉強な医者も優秀なソフトができれば、AIに診断してもらえる時代が来るのかもしれない。
  • 平成28年10月から待ちに待ったB型肝炎予防の定期接種が始まった。
  • 平成28年11月津軽地区に旧国立弘前病院と弘前市立病院を統合して、新しい基幹病院を作るという構想が発表された。平成32年オープンを目指すという。病床数を減らすことも大きな目標だと思われるが、津軽地域の内科系、外科系の救急医療が崩壊の危機にあることも、構想を進める動機の一つになっている。突然のように県からの指導という形で会議が招集されたこともあり、詳細な背景は不明だが、小児救急に対する言及は全く無いようである。津軽地区では平成18年から広域での休日夜間救急医療体制が発足し、この地域のほぼすべての小児科医の協力で365日、24時間子どもは小児科医が責任を持って診ることができるようになっている。しかし小児科医減少と高齢化で先行き極めて厳しいのが現実である。
  • 青森県立中央病院網塚先生が東奥日報に連載している「知ってほしい赤ちゃんのこと」は大変な力作だと感心しています。多くの小児科医が、世の中に発信してゆくことが本当に大切なことだと思います。乳幼児健診、予防接種、急患診療所への出務、学校医としての仕事などなど、課せられた仕事は多く、忙しさでなかなか、フットワーク良くはできないと思うが、小児科医の熱意を多くの方に知ってもらわなければ、子どもたちが不幸だと強く感ずるこの頃です。

【その他】

  • 子どもの貧困
  • 子どもの心の問題 発達障害
  • 小児在宅医療(青森県の現状)