1私は小児科医になってよかったと思っています。

それは生まれて間もない赤ちゃんが、わずか一年の間に、はいはいをし、お座りができるようになり、歩き始める。泣いてばかりいたのに、片言でママ、パパと言葉を話し、バイバイと手を振るようになる。3歳頃になり自我が芽生えると、かわいい第一反抗期になり、お母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃんなど周りの人を困らせる。自分で服を脱いだり着たりたたんだり、靴を上手に履いたりもできるようになり、ひらがなで自分の名前が書けるようになる。体も大きくなり、そしていよいよ小学一年生。小学校に入ったと思ったらあっという間大人びて、思春期を迎える。中学生、高校生となりそして立派に成人してゆく。小児科医はその成長過程を間近に見ることができるからです。

今月から12回にわたり、子どもについてその成長と発達という視点からお話したいと思います。

若いお母さん、お父さんにとって赤ちゃんが生まれる、新しい家族が加わるのはすばらしいことだと思います。それまでの生活とは大きく変わります。生まれる前に育児書などで予備知識を蓄え、いざ本番となります。しかし実際の育児は育児書どおりにならないことが山ほどあります。生まれて間もない赤ちゃんは一日に8回もおっぱいを飲み、10数回もおしっこをし、うんこを何回もします。この面倒だけでも大変なことです。沐浴もさせなければなりません。お母さんは一日中休む暇がなく、ほとんどが寝不足状態になります。何事もなくすくすく育ってくれればよいのですが、赤ちゃんが吐いたりおっぱいを飲んでくれなかったりなど心配なことが重なると、育児不安からマタニティブルーと言って、ストレス過剰状態になることもあります。それを防ぐには父親の協力も含め、周囲の暖かい援助が必要です。話し合える仲間がいることも大切です。また、完璧な育児をしようと気負いすぎないこと、過剰な情報に惑わされないことも心の負担を少なくします。自分が母親になる前に赤ちゃん、子どもとの接触の機会を多く持つことも大切で、最近は中学生、高校生に、赤ちゃんと触れあう機会を作るようにしている自治体が増えてきました。
無心でおっぱいを飲んでいる姿、すやすやと眠っている寝顔を見るのは心和むものです。子どもを授かった幸せを感ずると思います。生後一ヶ月の赤ちゃんでも母親の顔の輪郭はわかりますし、臭いで母親を感ずる能力もあるようです。授乳はゆったりとした気持ちで、赤ちゃんの目を見ながら、またおむつ交換の時などには赤ちゃんへ話しかける事が大切です。赤ちゃんはかまってもらうこと、抱っこされるのが好きです。抱きぐせを心配して抱かないというのは間違いです。赤ちゃんの心は、かわいがられることで育ってゆきます。何か心配なことがあれば悩んでないで小児科医に相談することが良いと思います。