青森県小児科医会会員への平成27年年末のご挨拶

平成27年12月16日

 

気がつくと師走。新聞には今年の重大ニュース特集が見られるようになり、今年もあと残すところわずかになりました。一年の過ぎ去る速さに驚くとともに、やり残した仕事の多いことにため息が出るこの頃です。

毎年同じ悩みを持ち続けていますが、青森県の小児医療は、患者数、小児科医師数など、全体として縮小傾向にあります。少子化に歯止めがかからないことが最大の理由ではありますが、厚生労働省の統計によると平成14年から平成24年の10年間で、小児人口は東京都を除いて全ての道、府、県で減少しています。しかし全国の小児科医師数の変動を見ると、同じ10年間で実数は1859人増加しています。全国で小児科医の数が減少しているのは青森県、和歌山県、徳島県、香川県の4か所であり、その中で青森県は全国で最も小児科医が減少した県になっております。小児人口千人当たりの小児科医師数も減少していますので、少子化の勢いよりも小児科医減少の勢いの方が上回っている事になります。

青森県は大きな面積と低い人口密度により、現状では小児科単科での新規開業は県内どの地域でもほぼ困難になりつつあります。勤務医も各公立病院の小児科医の定員は減りこそすれ、増えるだけの患者数が確保されにくくなってきております。ふと小児一次医療を担う小児科医がいなくなると世の中はどうなるのだろうかと考えたりしてしまいます。

そんな折現在英国のロンドンに在住していて、こどものころに当院をかかりつけにしていた方が一時帰国されて、2歳の子どもが風邪をひいたようだと言って連れてきました。

そこでロンドンの小児医療事情を聞いてみました。母親の率直な印象は日本の医療制度は本当に素晴らしい。特に子どもが病気になったとき、すぐに小児科医に診てもらえるなんて、感激ものだと話してくれました。ロンドンでは子どもに食物アレルギーがあり小児科医の診察を受けたいと希望した際、まずホームドクターに予約を入れ1週間後とかに診てもらい、そこで専門医を紹介され、実際に診察を受けるまで2-3カ月かかったそうです。

風邪をひいた場合などは様子を見るか、売薬で済ませることがほとんどで、小児科医へのアクセスは大変難しいとのこと。英国の小児科医の数は小児人口当たりでは日本の半分以下しかいませんが、彼らは日本で言うと小児科の二次、三次医療を担当する小児科医であり、一次医療は原則家庭医が担当です。

現在日本でこどもの健康を守っている小児医療に若者の参入が減り、高齢化した小児科医がリタイア―した後、英国のホームドクターと役割の似た総合診療医が小児科医に代わって小児一次医療を担当する時代が来るかもしれません。その時になって失ったものがいかに大きいかを国民は痛みをもって知ることになることを危惧します。私の印象では、小児科医が身近にいてくれることを、最もありがたいと感じているのは子育て中の医者のように思います。(特に内科医?)不安な気持ちを持ちながら子どもを診る総合診療医の姿を想像すると、やはり何かが間違っていると思います。不安な気持ちを持たずに子供を診る総合診療医の存在は悲劇と言ってもよいでしょう。総医療費の5%にしか過ぎない小児に対する医療費を横並びに削減対象にすることで、国は削減により得られる額よりもはるかに多くの大切なのを失うのではないでしょうか。親を始め子どもを守る多くの人たちに小児科医の実力、努力を知ってもらい一層連携してゆく必要があると思います。

今年一年間大変ありがとうございました。会員の皆様におかれましては健康で新しい年を迎えられますよう心から祈念いたしております。