2006年5月15日

青森県保険医新聞掲載記事

16-1今年一月から弘前市、黒石市、平川市など津軽地域八市町村が属する津軽地域保健医療圏で急患の子供が休日、夜間でも受診できる「広域小児救急医療体制」がスタートし、一次から二次、三次までの診療体制が整備された。

一次救急は弘前市急患診療所(弘前市野田)で365日、18名の小児科開業医と弘前大学小児科医が日替わりでカバーする。二次救急は、旧国立弘前病院、国保黒石病院など5病院でスタート、2006年度からは町立大鰐病院も加わった。高度医療を担う三次救急は弘前大学医学部付属病院小児科が24時間体制で対応する。

同診療所がスタートするまでの経緯や今後の課題について、本会・大竹進理事長が発足に関わられた河内暁一先生(弘前市)にお話を聞いた。

■     体制がスタートして3ヶ月ですがうまくいっているようですね。

広域で始めたことが住民の方にも周知されてきました。「急患診療所にいけば常に小児科医がいる」ということで親御さん、子供さんにとって大変安心感があると思います。

■     小児救急医療体制を構築するまでに至った経緯などをお聞かせください。

県から「どうすれば津軽地区で小児救急医療体制をスタートさせることができるか」と相談があり、弘前市医師会小児科部会で議論がされるようになりました。全国紙に「津軽医療圏における進まぬ小児救急体制」についての記事が掲載されましたが、現実的には不可能でした。なぜなら当時弘前市では小児科専門医の開業医は高齢の方を含めても15人しかおりませんでした。

これで24時間365日はできません。しかし、可能な道がひとつあるとすれば、それは大学の理解と全面的な協力が必要でした。その後、厚労省は全国の国立病院に対して小児救急医療の重点受け入れ先として整備するよう通達を出すなど追い風もあり、ようやく県は対策協議会を立ち上げました。

■     実際に体制が整うまでどのような苦労がありましたか。

一次救急を担う開業小児科医、大学、さらに消防、行政などの多くの方々の理解と協力が必要でした。子供の救急は軽症が多いので、小児科開業医で一次救急だけでも整備すれば何とかなるのではないかとの意見を述べる方もおりました。「入院しなければならないケースはわずか5%、三次までのケースは0.1%以下だ。まずは一次だけでも整備しては」という声もありましたが、一見軽症と思える患者でも子供は夜間に重症化することもあり、一次救急だけを整備すればいいということはありません。一次救急だけ整って二次、三次が無い救急などありえません。一次救急から、二次、三次までの救急医療体制を同時に構築する必要があることを理解してもらうことが、意外に大変でした。

■     今後の課題はありますか。

課題は山積しています。まずひとつは行政が「小児救急体制を維持する」という自覚と責任を持つことだと思います。本県以外でも小児救急体制をスタートさせているところはありますが、すでに崩壊しているところもあります。当初は世論などに押されてスタートしたところでも医師が減ったり、問題が起こったときに解決するための機関が曖昧だったりするとシステムはとたんに崩壊します。スタートさせることが大事ではなく、むしろ維持管理を重要視していく必要があると思っています。

■     この広域での取り組みは全国的にも珍しいと思います。ぜひモデル事業として広がればいいですね。

首都圏のように人口密度が大きく、比較的狭い地域に小児科専門医が多く入るところでは成り立ちますが、津軽地域は東京都と同じ面積に35万人の人が住んでいる人口密度の低い地域です。津軽地域では八市町村を合わせても人口は30万に届きません。八市町村を合わせるとかなり広い面積になります。人口30万人以下の地域で休日、夜間の小児救急医療体制が整備されているところは日本全国でも大変珍しいと思います。また、今回スタートした救急医療体制には津軽地域の開業小児科医、勤務小児科医、大学病院所属小児科医がすべて参加しております。地域の少ない小児科医が全員協力しなければこのような体制を作ることは不可能だったと思います。また本件で問題になっている医師不足、小児科医不足の理由のひとつに、県内では救急医療を学ぶことができないということがあります。卒業臨床研修医に小児救急医療の実際を経験してもらうこともこの体制では可能です。今後、大学のスタッフが研修医を連れて急患診療所で診療することも予定されています。この小児救急体制が全国モデルとなれば、本県で問題になっている小児科医不足解決の糸口となるかもしれません。

~小児救急体制の概要~

16-2◆一次救急:弘前市急患診療所(弘前市保健センター内)

受付時間

平日———-夜間午後7時から10時半まで

日曜・祝祭日—昼間 午前10時から午後4時まで

夜間 午後7時から10時半まで

弘前医師会所属の小児科開業医15名、南黒医師会所属の小児科開業医3名と、弘前大学小児科医が担当。受付時間以外は二次輪番病院が一次救急も担当する。

◆二次救急:旧国立弘前病院、国保黒石病院など5病院でスタート、06年度からは町立大鰐病院も加わり、6病院が輪番で対応

◆三次救急:弘前大学医学部付属病院小児科